愛するこどもへ お父さんとお母さんより

作者:不詳 訳:宮崎たかし

・私たちも やがて年老いていく
食べ物をこぼしたり
自分で服を着ることが出来なくなったり
そんな時
私たちが君を育て上げることに
一生懸命だったころのことを思い出して
どうか優しい心で接して欲しい

・何度も 同じ話を繰り返すようなことがあっても
話をさえぎらずに聞いてくれるだろうか
君が幼かったころ
君が眠ってしまうまで
私たちは 何度も何度も同じ話をしてやったのだ

・風呂に入りたがらないようなことがあったとしても
なじったり 叱ったり しないで欲しい
言い訳ばかりして逃げまわる君を
私たちは やっとの思いで風呂に入れてやったものだ

・時には世の中の変化についていけずに
とまどうようなこともあるだろう
そんな時は
私たちにも理解できるように 教えてほしいと思う
きちんと食事をとることや
ふさわしい服装でいることを
そしてなにより
正しく誠実に生きること・・・
私たちが 沢山のことを
根気づよく 君に教えてきたようにね

・杖なしでは 歩くこともできなくなったら
少しだけで良い 手を貸してくれないだろうか
君が まだ歩くことも覚束なかったころ
君の手を引いて 一緒に歩いたものだ
私たちの 素晴らしい思い出・・・

・そして いつの日か
「もう疲れた。早く死んでしまいたい」
なんて言ったとしても 怒らないで欲しい
私たちは ただ漫然と生きてきたわけじゃない
様々な困難を乗り越えて 頑張ってここまできたのだ・・・
君も いつか解る日がくるだろう

・すっかり年老いてしまった私たちを見て
悲しんだり 苛ついたり 恥じないで欲しい
誰でも年老いて行くもの・・・
ただ その現実を 広い心で見守ってほしい
君が幼かった頃 私たちがそうしていたようにね

・残り少ない時間を
愛と人間らしい誇りを感じながら
過ごしていけるように
ほんの少しだけ 手を貸して欲しい
そうすれば
私たちは 限りない愛と微笑みを
君にお返しするだろう

・いつも いつまでも 君のことを想っている