幸福論 バートランド・ラッセル

バートランド・ラッセル

バートランド・アーサー・ウィリアム・ラッセル(Bertrand Arthur William Russell, OM, FRS、1872年5月18日 - 1970年2月2日)
イギリスの哲学者、論理学者、数学者。第3代ラッセル伯爵。イギリスの首相を2度務めた初代ラッセル伯ジョン・ラッセルは祖父である。 名付け親は哲学者のジョン・スチュアート・ミル。ミルはラッセル誕生の翌年に死去したが、その著作はラッセルの生涯に大きな影響を与えた。 生涯に4度結婚し、最後の結婚は80歳のときであった。

第1部 不幸の原因

1,何が人々を不幸にさせるか

・自己自身への没入が他の方法でいやしがたいほど深刻になっているような不幸な人間にとっては、外面的な訓練こそ幸福に至る唯一の道なのだ。 (他人との絆を拒絶して自分の世界に浸っている人でしょうか。)

・すべての仕事の上でのまじめな成功というものは、その仕事に関する素材についてのなんらか本物の興味があるかないかにかかっている。

          

・人間性のなかの一つの要素を、それ以外の他の要素を犠牲にして啓発した所で、決して究極の満足は見出されるものではない。(調和的な発展が望ましい。)

2,バイロン風な不幸

・気分というものは議論によって変えることの出来ぬものである。・・・私がそういう気分から脱出したのは、・・・ どうでもせずにすますことの出来ない行動の必要によってであった。

          

・人間はお互いの協力に依存するものである。・・・愛情こそ協力をもたらす感情の中で最初のかつ一番一般的な形式である。

3,競争

・人生はコンテストであり、競争であり、そこでは優勝者のみに尊敬が払われるという人生観に由来している。 こういう人生観は感性や知性を犠牲にして意志だけを不当に養うという結果をもたらすものだ。
(資本主義のグローバル化はどうでしょう。)

4,退屈と興奮

・私はこの機械時代が驚くばかりこの世の退屈の総額を減少せしめたと言いたい。

          

・幸福な生活にとって必要なことは退屈に堪えるというある程度の力である。

          

・あまりに多く旅行をする、あまりに様々な印象を持つ、これは若い人々とってはいいことではない。・・・ある種の素晴らしいものが、 ある程度の単調なしには、あり得ない。

          

・幸福な生活とは、大体において静かな生活でなければならない。なぜなら、静けさという雰囲気の中でのみ、真の歓喜は生きることができるからだ。

5,疲労

・その思想や希望を、自己を越えた何かあるものの上に注ぎ得るところの人は、人生のありふれた色々な困難のなかにあっても、ある種の平和を見出す事ができる。

          

・この不幸を眼前にすえつけた後、結局それがたいして恐ろしい禍いではないだろうと考えるための合理的な理由を数え上げてみよ。

7,罪悪感

・自分自身に逆らって分裂している性格ほど幸福と能率をげんたいさせるものはない。

8,被害妄想

・被害妄想はいつでも自分自身の美点長所をあまりにも誇張して考えることに、その根源を持っている。

          

・しなければならぬ事がどんな事柄であるにせよ、それはただある程度の熱意によってのみ充分にになされることができるのであり、 そしてこの熱意なるものは何かの自己本位的動機なしには困難なのだ。

第2部 幸福をもたらすもの

10,今でも幸福は可能であるか

・仕事の喜びは、なんらかの特殊な技能を発達さすことの出来る人々にはすべて開かれているのである。

           

・他人に害を与えぬいかなる快楽も高く評価さるべきものである。

           

・義務感は仕事においては有益なものであるが、個人的関係においては不愉快なものである。多くの人々を進んでなんらかの努力なしに好きになるということは、 おそらく個人的幸福のあらゆる源泉のうちで最も大いなるものだろう。

11,熱意

・毎日の生活を満たすに足るほどの多くの事物に興味を持つことは、幸福なことである。
(その興味はあなたの心の努力でしか見つけることは出来ない)

12,愛情

・あらゆる形の用心警戒のうちで、愛における警戒こそおそらく真の幸福にとっては最も致命的なものであるだろう。

13,家庭

・親になるということが人生の提供し得る最大のまた最も永続性のある幸福を、心理的に与え得るものであるということは、明白だと思われる。
(子供を育てると言う結果の喜びは、何事にも代えがたい)

          

・子供のためにも、また同じように母親のためにも、重要なことは、母親が母であること以外のいっさいの関心や追求を自ら捨て去ってはならないということである。
(母親という役目のみに没入するのではなく、色々な人生の場面に積極的に出かけて経験をして、心を広く育てましょう。それがあなたを、また子供を強く育てます)

14,仕事

・目的の連続性ということは、結局、幸福をつくりあげる最も本質的な部分の一つ。こうした連続性は、多くの場合、主として仕事を通してのみ訪れるものだ。